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部長に連れてこられたのは海浜公園そばの小さなハワイアンレストランだった。高級なホテルディナーだったらどうしようと嬉しくも緊張していただけに、少しだけ拍子抜けする。
部長の車から降りると(これまた意外なことに国産車だった)、駐車場からは海が見えた。流石に泳いでいる人は居ないが、花火をしている若者たちの集団が居て少し煩い。
「おっ、いらっしゃい。近藤ちゃん」
「ちゃんは止めろ。今日は職場の女性が居るんだ」
「何だよ、彼女かぁ?」
「違うって。やっぱり止めときゃ良かったかな、この店」
「そんなこと言うなよ。サービスするからさ、近藤ちゃん」
「佐々木っ。お前は」
金髪で色黒のオーナーらしき人は、太い筋肉質の腕を部長の首に巻き付けた。
(近藤……ちゃん?)
私はあっけに取られて二人の姿を見る。正反対な外見だけど仲は良さそうだ。心なしか部長も砕けている気がする。
部長は首に太い腕を巻き付けたまま振り向いた。
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