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社は比較的大きなものだった。
社殿と呼ぶには小さいけれど、神社にある末社くらいには立派な代物だったのだ。
社の前には鳥居まで構えていたはず。
だが木造のそれはすでに腐っていて、上半分が折れて地面に落ちていた。色も、形も原型をとどめていない。
その隣を見て瑛太は息を呑んだ。
いつの間に庭に紛れ込んだのだろうか。朽ち果てた鳥居の隣に、妙に存在感の薄い一人の青年が立っていた。
(いや、存在感が薄いんじゃなくて、肉感が薄いのか)
生き物の臭いがしない、そんな存在だった。
「ああ……あれ、ここは……私は……一体」
青年が背の中ほどまでの黒髪を耳にかけると、凄まじく整った横顔が現れる。
特に、長いまつげに彩られた銀色の目は、何か妖力でも出ているのではないかというくらいにつややかだった。
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