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神様みたいにきれいな青年が瑛太に吸い込まれた。
神様なんて見たことないし、見たことがあっても嘘みたいな話だけれど、薫が見たことを未熟な語彙でそのまま表現すると、そうとしか表せなかった。
「……瑛太? 大丈夫?」
いくらなんでも見間違いだろう。
目をぱちぱちと瞬かせたあと、かがみ込んでしまった瑛太に恐る恐る声をかけると、
「う、うぅ……なんだ、この邪魔くさいものは……」
と瑛太がうめいた。ホッとしつつもまだ辛そうな様子を見て薫は彼の背を撫でる。すると、瑛太はびくっと体を震わせ薫を見上げた。
「そこな娘、手を貸してくれぬか」
「は?」
娘というのは何の真似だ。薫は真顔で突っ込もうと思ったけれど、口が固まってしまって言えなかった。
(え、え、これ……誰?)
瑛太は眼鏡をかけていなかった。
小学生の頃、女の子のように可愛かった顔は、少しのあどけなさを残すものの、端正に成長していた。
つまり、今風に言い直すとイケメンになっていた。
だが、瑛太は頑ななくらいに眼鏡を外さなかったはず。本人曰く視界が不明瞭なのが嫌いだということだが、こだわりの強い彼が意味もなく素顔を晒すとは思えなかった。
瑛太の目はひどく澄んでいて、どこか朝露を思わせる。彼の顔が可愛いと思ったのは、おそらくこの目のせいだろう。
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