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バスが祇園に到着する。
四条通りと書かれた標識が道沿いに建てられている。大きな四車線の通りを車が行き来していて騒がしい印象。まだ八時前と早い時間なので店は閉まっていて、チェーン店だけがちらほらと開いている。
どちらに行けば、と視線を動かした薫は、ある一点に目を留めた。
「瑛太、あれ――」
「あれだな」
大通りの突き当りに朱色の楼門があり、存在感を示していた。
思わずコクリと喉が鳴る。武者震いなのか震えが湧き上がる。
瑛太の顔は白い。励まそうと軽く叩くようにして背を押した。
「行こう。瑛太。だめでも、死ぬわけじゃないんだし大丈夫だよ。責任持って、最後まで付き合ってあげるから」
そう言うと瑛太は肩の荷が下りたのか、ひどく安心した顔をした。
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