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参道を進むと提灯がずらりと掲げられている建物が見えた。あれはなんだろうと思って首を傾げると、
「あれは舞殿」
と瑛太が小さくつぶやく。
「踊るの?」
「踊るんじゃなくて、舞うんだよ」
瑛太はそっけない。本番を前にそれどころじゃないのだろう。彼はそもそも舞殿を見ていなかった。彼の意識はもう舞殿の左側に移ってしまっているのだ。
そこには本殿が鎮座していた。
楼門と同じく朱塗りされた柱、白い壁、そして大きな檜皮葺の屋根。
「大きいね」
感想を漏らす。そして瑛太の横顔をじっと見つめる。彼は息を呑み、ただ本殿を睨みつけている。
一歩、二歩と前に進むと、本殿の前に立った。
二拝二拍手。そして手を合わせ、願う。
(どうか、どうか、瑛太が早くカミサマから解放されますように)
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