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関係者に聞かれたら怒られそうだ――と思った薫だったが、よく考えるとここはもう稲荷山だ。周りには神様と眷属の狐がいっぱいだ。祟られないかと別の心配をする。
「いや、だからさ。俺思ったんだ。おもかる石って、つまり、『努力を怠るな』ってことを人間に教えたいんじゃないかって」
薫は目を瞬かせた。
「どういうこと?」
「叶いやすいと思って油断してるやつには、重さを突きつけて努力させる。叶いにくいと思ってるやつには軽いと思わせて、諦めるのをやめさせる。――重かろうが軽かろうが続けさせるんだよ、人に、願いが叶うための努力を。そういう『前を向かせる力』って、つまり、神様の力なんじゃないか?」
すごい、と純粋に薫は思った。
そしてじんわりと何か温かいものが心を覆うのがわかり、鼻の奥がなんだか痛くなる。
少しひねくれてはいるけれど、瑛太が神様がいるという答えを出してくれたのが、ものすごく嬉しかったのだ。
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