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いつも通りに参拝を済ませる。
一呼吸長いお祈りの時間をみつめ、薫はふと今なら彼の願い事を聞ける気がすると思う。
ずっと知りたかった彼の”本当の願い事”。
千本鳥居をくぐりながら尋ねる。
「そういえば、瑛太って何を願ったわけ? わたし、てっきりわたしと同じでカミサマのこと願ったのかと思ったんだけど」
今の段階で瑛太が名前探しを容易いと考えるとは思えなかった。つまり彼は違うことを願ったのだ。
「ん? あぁ、だってそんなの祈ったってしょうがないだろ。叶わないって言われてもやるしか無いんだから」
最初から頼るつもりがないというのもすごいと思う。半ば呆れつつさらに問う。
「じゃあ、何? 叶いやすいって言ってたってことは、もっと簡単なこと?」
「――う、ん……まあ、全く希望がないわけじゃないっていうか」
瑛太はそこではっと息を呑む。
「薫は『カミサマのこと』を祈ったのか」
「っていうか、それ以外に祈ることなんかないよね?」
結局瑛太はそれ以降口をつぐみ、願い事は聞けずじまいになる。
だけど瑛太は嘘みたいに楽しげだった。
そしてふと手のひらを見つめたあと、小さく笑った。
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