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ハルさんが亡くなったと噂が耳に届いた翌週に、まるで待ち構えていたかのようなタイミングで回覧板が回ってきたのだ。
《清掃ボランティア募集》
ゴミ撤去の機会を狙っていたのかもしれない。
そんな風に穿ってしまうようなポップで不謹慎なフォントで、まるで楽しいことのように書かれたお知らせには、ハルさんが身寄りのないままに孤独死をしたこと。
そして行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律に則って、自治体が火葬をしたということ。
遺品整理を兼ね、掃除のボランティア(各家庭一人必ず出席、と書かれていて、ほぼ強制参加である)を募っていることが書かれていた。
母と一緒に回覧板を覗き込んだ薫はぽつんと呟く。
「お通夜も葬式もないんだね」
「自治体って火葬まではやってくれるんだねえ。でも葬式とか遺品整理まではしないってことか。まぁお金かかるしね。うーん、この日は仕事だぁ……薫、掃除はあんた行ってきてくれる?」
両親共働き、三人の兄はそれぞれ進学や就職で実家を出てしまっている。
高校二年生で、そして春休み中である薫がこの役目を任されるのはある意味当然のこと。
「薫がいてくれて助かるわぁ」
という言葉に、調子がいいなあと思いつつも背を押されて、薫は頷いたのだった。
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