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二 屋敷神の正体
公園へ向かって細い道を歩いていると、ご近所さんが挨拶をして来る。狭い町内なので、ほどんどが顔見知りなのだ。
「ねえ、神様って今どこに行ってるわけ?」
(って……よく考えたら変な会話だ)
すれ違ったおじさんが訝しげに薫を振り返り、我に返った薫は声を潜めた。
そもそもリアリストの瑛太が「憑依された」と訴えている今の状況が変だと、薫は改めて思った。
だが、長い付き合いで瑛太がこういう馬鹿げた冗談をやる人間ではないことはよく知っている。
至極真面目に憑依されたと言う彼に必要なのは、「バカを言うな」と言う説教ではなく、むしろ医師の診断かもしれない。
もし神様が瑛太に吸い込まれているのを見ていなければ、彼を病院に連れて行ったと思う。
「アイツは、今は寝てんだろ」
瑛太は通行人を特に気にせずにいつも通りの声量で返事をした。
「神様でも寝るの?」
「さあ。ただ、俺が寝てるときに起きてるっぽいから、今は逆って考えたらそう表現するのがしっくりきただけ」
「神様が起きてるときって瑛太は寝てるわけ?」
瑛太は前を向いたまま「んー」と唸った。
「なんとなく意識があったりなかったり。夢を見てるのに近い。おぼろげに記憶があるし」
「ふうん、聞こえてたんだ……」
瑛太は気まずそうに頭をかく。
「とにかく、手がかりみつけないと」
せっかくのふわふわヘアーはかき混ぜたせいでぐしゃぐしゃだった。
いつもならば整髪料をつけていないから、すぐにストンと落ちてくるが、今日はワックスがついているせいで、頭は妙な癖がついたままになってしまったのだ。
そして本人は気にしない。外見に頓着しないのは相変わらずのようだった。
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