二 屋敷神の正体

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(あー、とにかく、眼鏡が残念! めっちゃ残念!) 「ねえ、いっそ、コンタクトにしたら? 一気にモテるかもよ?」  ふと心の声が漏れると、瑛太の絶対零度の視線が薫に突き刺さった。 「はぁ? これ以上散財させるつもりかよ、ふざけんな。今の状況、誰のせいだと思ってんだ」  視線とともに怒りの矛先がギラリと向く。蒸し返されるのは嫌だと薫は慌てて話を元に戻す。 「でも手がかりって? 神様の名前を見つけるとか、見当がつかないんだけど」 「よくそれで引き受けたよな!」  半ギレの瑛太はそれでも説明をくれた。 「まずは、現場検証だろ。あの壊れた社を調べたら何か手がかりが出てくるかもしれない」 「なーるほど」  瑛太が顔を上げる。釣られて顔をあげると、ちょうど十字路に差し掛かったところだった。  左に曲がると、小学校を囲む古ぼけたフェンスが見えた。  道を挟んで左右には古い家が立ち並ぶ。自動車が一台通るのが精一杯の道を小学生が駆けていく。薫もあの時分に瑛太と一緒に集団登校や下校をした道だった。  道幅が狭まるに連れて、どこか異次元へと向かうような心地になってくる。会話はなく、足音だけが狭い道に響き渡る。  そして、一歩先を行く瑛太が知らない人に見えてくる。  これは本当に瑛太だろうか。確認したくなって薫は口を開いた。
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