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「そういえば、どうして家の中に神社があるんだろうね」
「屋敷神だな」
ぶっきらぼうな返答にこれは瑛太だと薫はホッとする。
「やしきがみって?」
「家の敷地内で、個人的に神を祀ってる社のこと。ほら神棚は分かるだろ?」
瑛太は神主の孫なだけあって、神様には詳しいのだ。
二ノ宮神社を誇らしげに案内していた幼いころの瑛太を思い出し、懐かしくなりながら、薫は弓道場にある神棚を思い浮かべた。
薫は一応弓道部に所属しているのだが、古い道場には神棚が据えられていて、射場に入るときには神棚に向かって一礼をする。
「あれを大げさにした感じって考えればいい」
瑛太の髪の上に薄紅色の花びらが舞い落ちる。
自治会館前の桜は、昨日今日で一気に開いて満開だった。
細い道をハルさんの家に向かって歩いて行くと、荷台に大量の荷物を乗せたトラックが一台バックしてきた。
このあたりは行き止まりが多いせいで、よく車が迷い込んでは立ち往生している。脇に避けて進むとハルさんの家にたどり着いた。
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