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無人の家はガランとしていた。
先程のトラックの荷物はここのものだったのかもしれないとようやく気づく。
カビや染みの着いた畳の上にはビニールシートが置かれて、大量の本や衣類などの遺品が無造作に積まれていた。
どうやらゴミとの分別が精一杯で、分類などは全く手付かずのままだった。
暗い家の居間には神棚があった。
木製の小さな社の他には、榊も御札もなにもない。そのせいで、神棚は空虚に見える。
もしかしたらもう神様はここにはいないのかもしれないと、薫は何となしに思った。
「――屋敷神か」
となりで神棚を見上げていた瑛太が踵を返して庭に出た。薫は瑛太に続いて庭に出る。
柔らかい日差しが頬をなでていく。草むしりを終えた庭には青臭い空気が未だ漂っていて、社の残骸は放置されたままだった。
燃えるゴミに出せるくらいにはバラバラだったけれど、社の形が少し残っていたため、迂闊に処分できないという判断だろう。
禁止されているわけでもないのに、御札などを燃えるゴミに出せないのと同じ。神様が宿っていそうで、罰当たりな気がするのだ。
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