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そのまま日曜を待つはずだったが、瑛太は、金曜日の夕方、財布を手に薫の家のチャイムを鳴らした。
「ど、どうしたの?」
部活から帰って腹ペコだった薫は、夕食への未練を断ち切れず、箸を片手に玄関に顔を出す。
だが、悲壮感漂う瑛太の顔に思わず箸を取り落とした。
金曜日といえば給料日。また何かやられたのかと思ったのだ。
サンダルを履いて外に出る。
花冷えというのだろうか。昼はポカポカなのに、薄暗くなると外の空気はひんやりと冷たい。カーディガンの前をかきあわせる。
「神様になにかやられたの!?」
開口一番言うと、
「いやまだ。これ、預かっててくれないか?」
瑛太は財布を差し出す。
「えっ……なんで? 銀行は?」
「行ってきたけど、全額預けるわけにいかないだろ。休日に使う分だけ残しておいたけど、それ使い込まれそうで」
「わたしが使い込んだらどうするわけ」
「薫なら、ちゃんと請求できるから」
「……」
自分で使い込んだものに文句は言えないということか。
納得した薫は財布を受け取る。
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