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(さっきだって、俺が口出ししなかったら室内掃除プラスゴキブリ退治だろ。どうする気だったんだよ)
そして助け舟に本人が気づくことはない。
(いつまでなんだろうな、これ)
見えない未来に僅かに鬱屈しかけた時、ふ、と日が陰り、あたりが暗くなった。
瑛太は思わず空を見上げ、雲に隠れた太陽に目を眇めた。
そのとき、バリ、という雷のような音が響き渡った。
ぎょっとして振り向き、瑛太は目を見開いた。
薫が呆然と立っている場所のすぐ近く。
草の中にもうもうと立ち上る埃が治まると、ポッカリと何かの残骸が広がっていた。記憶を辿って思い出す。
(そうだ。この場所にあった非日常的なものって言うと――)
瑛太自身にとっては割りと身近で。だけど、普通はこんな家の庭にあるはずのないもの。
《社》が、ここにはあったのだ。
『神様ってこんなところにも居るんだぁ』
『そんなもの、いないよ。だって見えねーし』
『見えないからっていないとは限らないよ。なんなの、瑛太って神様、信じてないの? 神主さんの孫のくせに』
幼いころ、ここに忍び込んだ時の会話が鮮やかに蘇ったと同時に、当時の風景も眼裏に浮かび上がった。
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