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四 太陽神の女神
「――んじゃあ、日曜な。神明系の神社の場所は調べとくから」
予鈴と同時に言い置くと、瑛太が薫のクラスから出ていく。
ざわり、女子が何か囁きあった気がして、なんだろうと思って薫は後ろを振り向いたけれど、すでにクラスは平穏を取り戻しているようだった。
昼休みに瑛太が薫の教室へ訪れるのはさほど珍しいことではなくなっていた。
最初どよめいていたのが嘘のようだ。
「まるで――の約束だよね」
密やかな声に振り向くと、後ろの席の佳子ちゃんと目が合う。
「え? 佳子ちゃんなんて言った?」
彼女は小さくため息を吐き、
「なんかさあ、ニノミヤ、変わったよねえ」
と言う。
なんとなく前と同じセリフじゃない気がしたが、追及するほどでもない。
「…………そう?」
髪型はたしかに変わったけれど、他に何か変化があっただろうかと薫は首を傾げる。
学校は当然制服だ。
何の変哲もない詰め襟の学生服。他の男子生徒と何も変わらない。ただ、少しだけ背が高いだけで。
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