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―――…
フェルディナン様。どうされました?」
不意に笑みを零した自らの主に、リカードが問いかける。二人は今、王都からの街道を歩いている所だった。
「こうしてお前と歩くのは、久々だと思ってな。少し、昔を思い出した」
「こっそりと、城を抜け出していた頃の事ですか?」
少し呆れたように言うリカードに、フェルディナンは頷く。
「お前も知っての通り、養母であったエルザに止められていたからな。そうやって外に出るしかなかった」
「それで叱られるのは、私だったんですけどね」
苦笑するリカードに、フェルディナンは楽しそうに笑った。そんな笑顔を見るのもまた久々だと、リカードは思う。
そして、目的の町が見えた時、フェルディナンが感嘆したような声をあげた。
「ここも、賑やかになったな」
「そうですね。他国からの旅行者も増え」
リカードはそう言いながら、道端で町人と会話をしている男に目を止める。
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