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「そんな時に、たまたま同じクラスになって、話してみたいなって思ったのがきっかけだった」
「なんか、意外ですね。もっと何か大きなきっかけがあったのかと思いました」
「んー、まあ。俺にとっては知り合いと同姓同名だったことも、その本を好んで読んでいたことも特別だったんだよ。他の人間にとってはなんでもないことだろうけど」
「あの本が?」
「まあね。そこまで言わなきゃいけない?」
「……別に、本についてはいつか言いたくなった時でいいです。それで、好きになったのはいつなんですか?」
「はっきりはわかんない。一冊の本をずっと大事にしていることも、三浦と一緒にいることで嫌な思いをすることが多くても、じっと我慢してることも気になってた。多分、ずっと前から好きだったんたんだと思う。でも実感したのは、アイツが夏希のことを好きだって言った時から。なんで夏希なんだろうってもやもやした」
「じゃぁ、高瀬さんがお姉ちゃんのこと好きだって気付いた時にはもう、お姉ちゃんはお兄さんのことを好きだったんですか?」
「そういうこと」
「……去年、話しかければよかったじゃないですか」
「去年は別に好きとかじゃなかったからな」
今更、あの時にこうしていればなんて言ったって、戻れるわけではないし、そもそも好きだと気付いたタイミングだって悪かったのだから仕方がない。
「じゃあ、今はどうなんですか?」
「そりゃ、好きだよ。もう夏希には会わせたくないくらい」
そんなふうに思ってしまう自分も、こんなふうに好きな女の妹に全て話してしまうことも情けなくて俺は、自分を嘲笑うかのように口角を緩めた。
「わかりました。お兄さんと会うことを阻止するのは、お姉ちゃんを傷付けることになりそうなので、できないと思いますけど、要はお兄さんから気持ちを高瀬さんに傾けさせればいいんですよね」
「なに、協力する気になったの?」
「お姉ちゃんのこと、本気なのはわかったので。これからどうするか具体的なことは全然思い付きませんけど、お姉ちゃんのことちゃんと守って下さいね」
「ああ、うん。それは約束する」
妹の方だって、きっとこの先夏希といることでアイツに何らかの害を被る可能性があることもわかっているのだろう。
そこからアイツを守ってやれるのは、俺しかいない。きっと夏希の前でアイツに手出しするやつなんていないだろうから。
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