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「それにお姉ちゃんさ、いつも誕生日プレゼントだって欲しいものは特にないからって毎年もらってないじゃん。だから、お母さんだってこういう機会にって選んでくれたんだと思うよ」
と瑞希は言葉を続けた。
去年まで中学生だったくせに、しっかりした子だと思う。いつもなんだかんだ、私の方が瑞希に慰められたり、説得されたりしている気がする。
「そうかな?」
「そうでしょ。使わなかったら、お母さん悲しむよ。押し付けちゃったんじゃないかって」
「そんなことないんだけど……」
「だったら、使ってみなよ。お姉ちゃんが使わないなら私が貰っちゃうよ?」
「それはだめ!」
「わかってるって」
瑞希は笑いながら、メイク道具を開封するように私を諭した。
私は仕方なく、一つ一つ丁寧に開封し、全て新品のそれらをキャップを外したり、コンパクトを開けて見たりした。
全ての化粧品からいい匂いがするようだった。
「なんか、いい匂いするんだね」
「うん。だから、使うときまた幸せな気分になれるの」
「そっか……」
開けて見たものの、使い方のわからない私がむやみやたらに触るのも嫌で、私は全てポーチの中に片付けた。
「え? 使ってみないの?」
「うん……明日も学校だし」
「ふーん。今から練習して明日学校にメイクしていけばいいのに」
「そ、それはちょっと……」
いきなりメイクした状態で学校へ行けば、以前髪を切った時と同じように、晒し者にされてしまう。
母の気持ちは嬉しいが、中々この道具を使おうと言う気にはなれなかった。
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