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 1限目が終わると、野村くんは「次、杉山だよな?」と声をかけてきた。 「うん。杉山先生資料多いよね。行ってこようか」  自然と会話をしながら、お互い当然のように職員室へと向かう。杉山先生に挨拶を済ませ、どっさりと渡された資料を2つにわけて、私と野村くんでそれぞれ持った。 「重いしょ? もうちょっと俺持つよ」 「え、いいよ。このくらい」 「いいって」  野村くんは、私の資料の束から三分の一ほど持っていき、自分が持つ分の資料の上に重ねた。 「ありがとう」 「うん」  何気ない優しさが嬉しくなる。今までだって、男子と一緒に日直をしてきた。けれど、こんなふうに優しくしてくれることなどなかった。  野村くんと隣の席になったり、夏希先輩と話すようになってから、男子に対する見方が少し変わった。  今までは私のことを笑い者にするような生き物だと思っていた。けれど、中には優しい人もいるんだなと目の前の資料を見ながら思った。  休み時間になる度に、野村くんと先生のところへ挨拶へ行き、私は日誌を書いた。放課後になれば日誌を書き終わるまで野村くんは、隣の席に座っていた。  パラパラと教室から生徒が少なくなっていく。後輩に捕まっていたひかりには先に帰っているように伝えた。  野村くんは、高瀬秋の席まで行くと少し話をしてから戻ってきた。
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