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「帰ってもいいよ? これ書いたら終わりだし」
野村くんと高瀬秋が一緒に帰っているかどうかは知らないけれど、移動教室の点検も、黒板消しも終わった。
残るは、日誌を提出して終わりだ。野村くんにいてもらう必要もなかった。
「いや、いいよ。日誌書いてもらってるし。それに、一応帰るまで日直だし」
「……野村くんって真面目だよね」
「そんなことねーよ。相沢だって人のこと言えないじゃん」
彼は笑いながら、頬杖をついた。
「私は別に……」
「まあ、相沢が協力してくれたから日直も楽だったし、お互い様ってことで」
「うん、ありがとう」
「どういたしまして。それより、秋と喧嘩でもした?」
「え?」
意外な野村くんの言葉に、思わずペンを走らせる手を止めた。
「ほら、一時話したりしてたのに、そういうの最近見ないから」
「別に喧嘩とかじゃないし」
そう、喧嘩じゃない。喧嘩で済むようなことではないし、高瀬秋が何を考えているのかもわからない。
「ふーん。なあ、花火いかない?」
「は?」
次々に飛び出す予想だにしない言葉に、私は顔をしかめて「花火?」と聞き返すのだった。
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