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「偶然じゃない?」 「偶然なわけないだろ」 「なんでそう……」  何でそう思うの? そう聞こうとしてやめた。きっと野村くんは、ずっとひかりのことを見ていたんだ。  私が夏希先輩のことを見ていたように。それを感じて愚問だったと気付く。  自分と重ねてみれば、野村くんが密かにひかりを想っていたことが切なくなった。  ひかりが実際に高瀬秋のことを好きなのかどうかは定かではないが、私だってもしも夏希先輩に好きな人がいたら、自分には手の届かない存在だとわかっていてもショックを受けるだろう。  そんな思いを、今野村くんはしているのだ。私を利用しようとしたことに苛立ちはあるが、野村くんがなんとかひかりと距離を縮めたいという気持ちは、痛いほどよくわかるのだ。 「わかった。誘ってみるよ」 「え?」  私の言葉に、彼は驚いたように目を見開いた。 「でも、3人で行くのって微妙じゃない?」 「そうなんだよな……。普段俺も秋といるし、急に他のやつ誘うのもおかしいと思われそうだし。相沢誰か男友達いない?」 「いるわけないでしょ」 「だよな」  当然かと言わんばかりの顔で言われ、男友達がいることがそんなに偉いのかと言ってやりたくなる。 「最悪秋を誘うか……」 「じゃあ、私いかない」 「何でだよ」 「嫌だから」 「あーもう、だからさっき喧嘩したのかって聞いたのに」 「そういうつもりで聞いたの?」 「そう」  本当に呆れる。野村くんとひかりの関係がどうなろうと知ったことではない。しかし、私と高瀬秋の問題は別だ。  野村くんの私情に私を巻き込んでは欲しくない。 「とりあえず、誰かいたら誘ってみて。俺も秋以外のやつに声かけてみる」 「それだと野村くんが高瀬くんと気まずくなったりしないの?」 「あー……、まあそうなったらバイトだと思って誘わなかったって言うわ」 「そう」  それなら彼も納得するかもしれない。私は、一旦引き受けてしまったものの、面倒なことになりそうで大きな溜め息をつくしかなかった。
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