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日直の仕事を終えて野村くんと解散した後、私は美術室へと向かった。
最近、高瀬秋とのことがあってから美術室も行ったり行かなかったりになっていた。
そのことについて夏希先輩は深く追及してこなかったが、私が絵のモデルになっている以上、私がいないと絵が進まないのも事実で、申し訳なさから今日は行くことにした。
「ねえ、ちょっと」
後ろから声をかけられ、私は振り向く。見たことのない女子生徒3人だった。
派手にメイクをして髪を巻いているところを見ると、恐らく3年生だろう。
なぜ知らない先輩に話しかけられるのか不思議で、私は立ち止まって彼女達に向き合った。
「なんでしょう」
「今からどこ行くの?」
「え?」
「え? じゃなくてさ。これからどこに行こうとしてんのって聞いてるんだけど」
私が向かっているのは旧校舎にある美術室だ。当然玄関とも校門とも反対方向で今から帰るようには見えないだろう。
「えっと……」
「あんたさ、最近美術室出入りしてる相沢優って子でしょ」
美術室という言葉と、私の名前まで知られていることに驚き、嫌な予感がした。
この人達は、きっと夏希先輩のファンで、私が夏希先輩と会っていることを知っているんだと直感した。
「それは……」
「あのさ、あんた夏希と会ってるみたいだけど、それうちらの中じゃルール違反だから」
「ルール違反……」
「毎日会ってるなら、夏希のコンクールが近いこととかも知ってるでしょ? うちらは夏希の邪魔にならないように時間を作ってるわけ。なのにあんたみたいな身の程知らずがおちおち近付いて、夏希が入賞しなかったらどうやって責任とるつもり?」
「そうだよ。ブスのくせに気安く夏希に近付いてんなよ」
「ブスだって気付いてないんじゃないの?」
次々にキツイ言葉からバカにしたような笑い声まで浴びせられ、慣れていたつもりだったが胸が痛くなる。
「てか、何であんたみたいなのが夏希と一緒にいるわけ? 美術室には行かせないから」
「コンクール終わっても行くなよ」
「夏希の迷惑だってわかんないの?」
冷たい目で睨まれ、思わず足がすくむ。いつかこんな日がくるかもしれない。
そうわかっていたはずだった。高瀬秋にだって忠告された。それでも3対1はずるいと思う。
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