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「何とか言えよ!」  真ん中にいた女に怒鳴られ、余計に何も言えずに立ちすくむ。 「ねぇ、こいつなんもわかってないみたいよ」 「理解力のない後輩には指導が必要じゃない?」 左右の2人がそう言うと、3人は楽しそうに笑い、左にいた女が私の腕を掴んだ。 「ちょっと来なよ」 「え、嫌です」 「嫌じゃねぇよ。後輩が先輩に指図すんな」  最初よりも汚い言葉遣いで冷たく言い放たれる。 「やめてください!」 「うるせーな! 来いよ!」  腰近くまで伸ばした髪をぐっと引っ張られ、自然と体がつんのめる。そこに足をかけられ、私はそのまま廊下へと倒れ込んだ。  その姿を見て3人の笑い声が上から降ってくる。擦りむいた膝がじんじんと痛んで目頭が熱くなった。  私が転んだ拍子に学生鞄とは別に持っていた手提げバッグの中から、「窓際の天使」と瑞希にもらった雑誌、そして母が買ってくれたメイク道具が入ったポーチが飛び出した。 「なにこれ、可愛いポーチじゃん」 「へー、なに入ってんの」 「ちょ、やめてください!」  まだ使ってもいないメイク道具を取り上げられ、中身を見た3人は「え、なにこれ。全部新品じゃん!」「しかもこれ結構高いやつじゃない?」「本当だ! このリップ欲しかったやつだし!」と口々に盛り上がっている。 「返してください!」  私は立ち上がって、そのポーチを取り返そうと手を伸ばすが、2人に体を押さえられ、1人にポーチを持ったまま距離を置かれた。 「あんた、化粧なんてしてないんだからこれいらなくない?」 「てか、ブスがいくら化粧しても変わんないから」 「メイク道具も使ってくれる人のところにいったほうが幸せだと思うんだよね」  そう言いながら、ポーチを持った女が新品のリップのキャップを開けて、自分の唇の上をなぞった。 「あ……」  まだ使ってなかったのに。お母さんがせっかく買ってくれたのに……。何で学校になんか持ってきちゃったんだろう。もう後悔しかなかった。
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