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「そのリップめっちゃ発色いいじゃん!」
「じゃあ、アタシチークがいい!」
「私、マスカラもうないんだよね」
私のものだと言うことを忘れた見たいに、三人は私のメイク道具をわけようとしている。
「返して! 全部私のです!」
「はあ? だから言ったじゃん。化粧しないやつがこんなの持っててもしょうがないでしょ」
「でもこいつ、こんな雑誌持ってるよ」
「うわ、似合わない! しかも結構前のやつじゃん。こんなの読んでどうするのかなー?」
瑞希に貰った雑誌をパラパラと捲り、それを廊下に叩きつけた。バンっという大きな音が響いて、その音に私は身を縮めた。
「そっちの本は?」
叩きつけた雑誌の隣に落ちている『窓際の天使』を見つけて、私の右側にいる女が顎で本を指した。
「それはダメ!」
思わずそう叫ぶと、「なんか大事なものみたいよー」と隣で笑い声が聞こえる。
「へー、大事なんだ。ふーん」
ポーチを持っていた女は、『窓際の天使』に近づき、「たかが本じゃん」そう言って、上履きでその本を踏みつけた。
「あ!」
「そんなに大事なものなら学校に持ってこなきゃいいんじゃないの?」
踏みつけた上から左右に足を動かし、ページが破れる音がした。
ずっと大切にしてきたものを他人に壊された。自分の中で何もかもが壊れてしまったみたいで、押さえていた涙が一気に溢れ出した。
「あれー? 泣いちゃってるの?」
「でも自分が悪いんだよ? ルール破って夏希に近づくから」
まるで悪いと思っていない3人はケタケタと笑い、泣いている私を面白がっているようだった。
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