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「先輩達がいった通り、夏希が本当に迷惑してるなら、きっとお礼を言ってくれるんじゃないですか? 邪魔だった後輩を懲らしめてくれてありがとうって」 「秋くん、お願い! 夏希には言わないで」 「いや、無理ですよ」 「なんで……秋くんはその子のことそんなに庇うの?」  ポーチを持っていた女がそう聞くと、高瀬秋は一瞬間を置いて「うち、親同士が仲いいんですよ」と言った。 「え?」 「だから、俺も夏希も家族ぐるみでこの子と付き合いあるし」 「そんな……」 「だから、夏希がこの子のこと邪魔だっていうのおかしいと思うんですよね」 「で、でも……」 「あのさ、いい加減素直に謝ったら?」  高瀬秋が苛立ったように言うと、3人は顔を見合わせて「……ごめん」と一言呟いた。 「先輩が持ってるそれ、この子のですよね? ちゃんと全部返してあげて下さいね」  彼の言葉に従い、それぞれ手に持っていたメイク道具をポーチの中に収め、それを私に手渡した。 「全部ある?」 「……うん」  でも、使われてしまったリップはもう元には戻らない。そう思うと悲しくて涙は止まらなかった。 「何か足りない?」  彼の言葉に静かに首を振る。 「じゃあ、なに?」  私に彼がかける言葉は今までにないくらい優しい。まるで子供をあやすかのように、柔らかい言葉で尋ねてくる。 3人の息を飲む音が聞こえるような、そんな気配を感じて、彼は3人の方を向くと「ねぇ、何で?」と低い声で尋ねた。
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