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3人は、高瀬秋の問いかけにばつが悪そうに顔を見合わせた。
「いずれこの子に聞き出せばわかることですよ。今言っておいた方がいいと思いますけど」
彼は抑揚のない声でそう言った。
「えっと……、その中のリップちょっと使っちゃったからかな?」
使用した本人がへらへらと笑いながら、そう言った。
「リップ?」
彼は、首を傾げると「ちょっと貸して」と私からポーチを取り上げ、中身を確認し始めた。
全てが新品だと気付いたのか、彼は「まだ使ってもない人のもの使うなんて恐喝と同じですよ。へたしたら犯罪だし」と言った。
「犯罪なんて……大袈裟な」
「やった方は大袈裟だと思うかもしれないけど、やられた方はそんなに生易しいものじゃない。それに、犯罪かどうかを決めるのはあなた達じゃなくて法律だし」
「……」
高瀬秋に正論を述べられ、三人はぐっと押し黙った。
「とにかく、リップは弁償して返して下さいね。夏希にもそう伝えておくので」
「でも……」
「でも何です? ちなみにファンデーションも割れちゃってるみたいなんで、こっちもお願いしますよ。全く同じもの」
彼は自分が持っていた学生鞄から、紙とペンを取り出すと、リップとファンデーションをくるくると向きを変えてラベルに書いてある番号を紙に書き写した。
「はい。お願いしますね」
「……」
リップを使った女が、黙ってその紙を受け取った。
「じゃあ、俺この子と話があるんでもう行っていいですよ」
彼がそう言うと、3人は逃げるようにしてバタバタと走って行った。
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