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「へー、秋の?」
「はい。野村くんのこと全然どういう人か知らなかったんですけど、隣の席になって話すようになったら、真面目で優しくて頼りがいのある人でした」
「そう。……優ちゃんは、その子のこと好きなの?」
物品を用意し戻ってきた先輩は、私の目を見てそう尋ねた。
「ち、違いますよ!」
どうして私が野村くんなんて好きになるのよ。先輩には誤解されたくなくて、私は首をぶんぶんと左右に振って否定した。
「違うの?」
「違います! 野村くんは、私の友達のことが好きみたいなんです。今日も協力してくれないかって頼まれちゃって……」
「どんなこと?」
「えっと、今月に花火大会があるんですけど、そこに私の友達を誘って一緒に来てくれないかって……」
「花火大会? じゃあ、秋も誘って4人で行くの?」
夏希先輩の言葉にはっとした。先程、野村くんは高瀬秋の友達だと言ったばかりで、先輩は当然そう思うだろう。
しかし、ひかりは高瀬秋のことが好きかもしれなくて、彼のことは誘いたくない。
けれど、その彼は夏希先輩の弟なわけで。これを先輩に言っていいことなのか悪いことなのか、判断がつかなかった。
なんて答えていいかわからず言葉を探していると、「違うの? 秋はいかないの?」と彼は更に尋ねた。
「えっと……もしかしたら、私の友達が秋くんのことを好きかもしれないんです……」
「へぇ……じゃあ、秋が行ったらその子は困っちゃうね」
「あの……まあ、そうなんです」
「他に一緒に行く人いるの?」
「それが……私には男友達とかいないので、どうしていいかわからなくて」
夏希先輩が話の展開を察してどんどん話を進めるものだから、私は素直にそう言ってしまった。
「じゃあ、まだ優ちゃんと一緒に行く人はいないんだ」
「はい……」
「じゃあ、俺が一緒に行ってもいい?」
「え!?」
予想もしていなかった言葉が先輩の口から溢れ、私はつい大きな声を出してしまった。
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