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「ダメ? 俺も優ちゃんと花火見に行きたい」
「えっと……」
まさか夏希先輩からそんなことを言い出すなんて。彼とは、ここで会うのが精一杯で、学校を出たら会えるような人ではないと諦めていた。
それなのに、花火大会に先輩の方から私と一緒に行きたいと行ってくれている。
この先輩の言葉から、ただの野村くんの頼み事ではなくなってしまっていた。
「俺が行ったら迷惑かな?」
「め、迷惑だなんてそんな……。私は、嬉しいです」
高瀬秋が来るよりもよっぽど。先程助けてもらった恩など忘れたかのように、既に私の頭の中は夏希先輩でいっぱいだった。
「本当? それじゃあ、一緒に行こう」
「はい。野村くんに話してみます」
「うん」
「あ……でも、絵は大丈夫なんですか?」
「大丈夫。最初の予定よりも進んでるし、たまの息抜きも必要だから。それに、優ちゃんと一緒に花火を見に行けたら、もっと頑張れそうな気がする」
綺麗な笑顔でそんなことを言われたら、一生分の幸せを手に入れた気分になった。
学校一の王子様に誘われた私は、まるでシンデレラだ。
なんて幸せなんだろう。シンデレラもこんな気分だったのだろうか。けれど、急に夏希先輩が来ることになると知った野村くんやひかりはなんて思うだろうか。
私が、夏希先輩と交流があることを知られてしまう。
それを恐れたが、あの三人組の先輩達が私を見つけたということは、噂はすぐにでも回るかもしれない。
それに、私と一緒に行きたいと夏希先輩が言ってくれたということは、私とこうして会っていることを隠す気はないともとれた。
それを思えば、素直に彼と一緒に花火を見に行きたいと思ってもいいように思えた。
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