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夏希先輩に一緒に花火に行きたいと言われたことで、私は彼との会話中そのことで頭がいっぱいだった。
今までは、誰かに見られるのが怖くて別々にしていた下校も、今日は断るのをやめた。
こうして学校を出てから並んで自転車を走らせるなんて、絶対に叶わないことだと思っていた。
何だか幸せ過ぎて、まるで放課後のデートみたいで心臓が大きな脈を打つのを痛いほど感じた。
次の日、早速私は野村くんにそのことを伝えた。
「え? 秋のって……夏希くん?」
「うん……」
「なんでまた……。え? 相沢と夏希くんってどういう関係なの?」
「どういうって……ちょっと、たまたまよくしてもらってて」
「えー……。秋とは喧嘩中なのに?」
「いや、だからそもそも喧嘩とかじゃなくて……」
やはり野村くんは、夏希先輩と私に交流があることを疑問に思っているようだった。
夏希先輩が来るかもしれないということに対し、はいそうですかとはいかないようだ。
「秋は知ってんの?」
「なにを?」
「相沢と夏希くんが仲良いこと」
「知ってる」
「ふーん……」
「なに」
「いや、なんか意外な組み合わせだったからさ」
「私も、今でも慣れない」
「なんだよそれ、仲いいんじゃないのかよ」
私自身が一番驚いているのだから、慣れるはずがないのだけれど、野村くんと一緒になって驚く私を見て、彼は笑った。
「まあ、秋がくるよりかはいいか……」
「まだひかりだってくるかわかんないじゃん」
「いや、来るよ。夏希くんがくるなら」
そう言った彼は、複雑そうな顔をしている。その顔を見てはっとする。
これを気にひかりは夏希先輩に好意を抱いてしまうのではないかと。
「私、言う人間違えたかな?」
「多分な。でも、一応先輩だし断るの大変だろ?」
「まあ……。それか、私はいかないとか」
「それは一番なし」
「だよね……」
私は、新たな不安を抱えながら、こんなことなら高瀬秋がきた方がよかったかもしれないなんてことを考えた。
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