2019人が本棚に入れています
本棚に追加
/437ページ
日が長いこの時季の太陽がようやく沈みかける時間、じめじめとした空気の中で、メンバーが集まるのを待っていた。
今日は年に一度の花火大会だ。
ここに来る気なんてなかったが、まさかよりによってこんなメンバーで来るはめになるなんて思ってもみなかった。
来ないという選択肢だってあった。しかしそれができなかったのは、相沢が夏希と行くと知ったからだ。
ことの始まりは、相沢の妹から電話がかかってきたことだった。
以前ファミレスで話をした時、連絡先を交換したのだ。俺は、相沢の連絡先すら知らないのに、その妹とは連絡が取れるだなんて皮肉な話だ。
しかし、そのおかげで二人が一緒に花火大会へ行くことになったと知ることができた。
「ねぇ、高瀬さん大変! お姉ちゃんが夏希さんとデートしちゃう!」
急にそんなことを言われたら、俺だって驚く。たしかに相沢が美術室へ行くのを止めなかったし、文句も言わなかった。
けれど、それは相沢があの女達に嫌がらせをされて怖い思いをして傷付いていると思ったし、その傷を癒すには夏希に会いに行くのが一番効果があると思ったからだ。
しかし、それとデートは全く別の話だ。それに野村と三浦まで行くなんて納得できなかった。なぜそのメンバーの中に俺じゃなくて夏希なのか。
疑問しかなかったが、相沢の妹から一連の流れを聞けば納得ができた。
「私がお姉ちゃんとひかりちゃんに一緒に行きたいってお願いするから、高瀬さんも一緒に来て下さい」
「なんで俺が……。誘ってこないってことは邪魔なんだろ」
「それは、野村くんって人にとってだけです。お姉ちゃんは、夏希さんがひかりちゃんのことを好きになっちゃうんじなないかって心配してるみたいです。私は、正直それならそれでいいと思うんですけどね」
「何で?」
「だって、夏希さんがなんでお姉ちゃんと一緒に花火大会に行きたいって言ったのかわからないですけど、夏希さんにその気がないならお姉ちゃんのこと振り回さないでほしいし……」
「は? 夏希が、相沢のことを好きって?」
「だから、それがわからないからこうして高瀬さんも一緒にって言ってるんじゃないですか」
相沢妹がそんなことを言うから、その可能性について俺も考えなければならないはめになった。
最初のコメントを投稿しよう!