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 相沢妹が、夏希が相沢のことを好きかもしれないなんて言うから、いちいち夏希の言動が疑わしく見えてしまう。  もやもやした気持ちで夏希を見ていると、「お待たせ」と声をかけられた。  振り向けば、浴衣を着た3人が立っていた。待っていた彼女は、水色に紺と白の花の柄が入った浴衣を着て、髪を上げていた。  いつものように化粧気なんてないのに、首筋が露になっていて、雰囲気の違う相沢に釘付けになった。 「あー! 校門にいた美少女!」  野村は、先程の反応が嘘のように、相沢妹を指差してそう叫んだ。 「え?」  野村以外が、クエスチョンマークを頭に浮かべる中、相沢妹に待ち伏せされていたことを思い出した。 「君、前にうちの学校の校門にいたよね?」 「あー……、お姉ちゃんを待ってた時ですかね?」 「え? 学校まで来たことあった?」 「うん。たまたまね、帰りが早くなったから。でも中々お姉ちゃんでてこないから帰っちゃったの」  俺を待っていたことが発覚すれば、このメンバーの中でややこしくなるだろう。さすが、できた相沢妹だ。  咄嗟に誤魔化してその場を収めた。 「この子が相沢の妹だったんだ」 「妹の瑞希です。今日は我が儘言ってついてきちゃってすみません」  彼女は律儀に頭を下げた。姉のためによくやると思う。どうしたらあんなに姉想いになれるのか不思議だ。 「大丈夫。大勢の方が楽しいよ、きっと」  夏希は、相沢妹にいつもの口調で言った後、相沢の方を見て「浴衣姿、可愛いね」と俺も野村も言えなかった言葉をさらりと言ってのけた。
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