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「あ、ありがとうございます。瑞希が着せてくれました」
相沢は、嬉しそうにそう言った。夏希は、どうしてこんなに簡単そうに相沢を喜ばせることができるのだろう。
俺にはできないことができる夏希に、劣等感しかない。
「え、瑞希ちゃんは浴衣も着せれるの?」
「去年、おばあちゃんに教えてもらったんです。自分でできる方が楽ですから」
野村は、本来の目的である三浦ではなく、相沢妹に話しかけている。こいつも俺と同じく、不器用なやつだと思う。
「ねぇ、秋。私の浴衣も可愛いでしょ?」
そんな三浦は、袖を左右の手で広げ、俺に声をかけた。
三浦のことなんて何とも思っていなかったが、相沢妹から三浦が俺に好意を抱いていると聞かされ正直迷惑だとすら思ってしまった。
相沢と距離を縮めたい俺にとって、その友達が俺に興味があるだなんて、面倒極まりない。とにかく邪魔だけはしてほしくない。
そう思ってしまうところが、そもそも俺と夏希との違いなのかもしれない。
「ああ、浴衣はな」
「ちょっと、秋ひどい!」
別に俺じゃなくたって、普段から可愛いだ綺麗だとちやほやしてくれるやつはいるだろ。
そんなことよりも、俺は夏希と相沢のことが気になって仕方がなかった。
「どこから回る? 何か食べながら花火見たいよな」
野村が話題を変えたことで、俺たちはとりあえず出店で何かを買うことにした。
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