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「あ、お姉ちゃん。わたあめあるよ」
「わたあめが好きなのは自分でしょ」
「へへ。じゃあ、なに食べる? 焼きそば半分こする?」
「じゃあね、たこ焼きも半分こして」
姉妹らしい会話に思わず顔が綻ぶ。姉妹というよりは友達っぽくて、相沢と三浦よりもよっぽど自然に見えた。
「二人は仲いいんだね」
そんな二人を見て、夏希は至って自然に話かけた。
「そうなんですよ。昔から両親が仕事終わるの遅くて、ずっと二人でいましたから。小学生の時からお姉ちゃんがご飯作ってくれてたんです」
「へぇ。すごいね。優しいお姉ちゃんなんだね」
相沢妹の言葉に、それで弁当も自分で作っているのかと納得できた。しかし、料理ができるなんて情報は夏希に与える必要はない。
本当に夏希と相沢の邪魔をする気があるのか疑わしくて、俺は思わず相沢妹を睨んだ。
俺と目があった相沢妹は、苦笑を浮かべ「夏希さんも、秋さんと仲いいんですよね」なんて俺と夏希へと対象を変えた。
「うん。うちも、両親いないことの方が多かったから。こう見えても秋はね、小さい頃は俺にべったりだったんだよ」
「ちょ、夏希! 子供の頃の話だろ!」
夏希が急に、子供の頃の話をするものだから、慌てて俺はそれを制止する。
確かに俺の家も海外にいることの多い父親と、小説を書くために別で借りたアパートに引きこもる母親がいることで、兄弟二人で過ごすことが多かった。
両親がいないことで、何をするにも夏希を頼っていたことは事実だが、そんな幼い時の話を引っ張り出されては、今の自分のイメージとはかけ離れすぎていて恥ずかしいったらない。
「えー、秋ってそんな可愛い時もあったの?」
「うるせーな。忘れたよ、そんなこと」
「小学生の時なんて、一人で家に帰るのが寂しくて、俺の授業が終わるまで廊下で待ってたんだよね」
「ばっ……」
「可愛いー!」
「可愛くねぇ!」
いちいちからかってくる三浦に、半ばむきになりながら否定すると、「なつかしい。瑞希もそうだったよね。
低学年と中学年だと授業の長さが違うから何時間も廊下で待ってたりして」と相沢が柔らかい表情を見せた。
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