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相沢が妹と話をしている姿をみると、妹の方がしっかりしている印象を受けるものの、その表情は姉そのもので二人の絆の深さを感じた。
だからこそ、妹の方は相沢に変な男が近付いてくるのが許せないのだろう。
野村や三浦も個々に自分の食べたいものを買い始め、わいわいと賑わってきた頃、相沢妹は自然と俺の隣に近付き「高瀬さん、お姉ちゃんと全然話しないじゃないですか」と話かけてきた。
「しょうがないだろ。普段あいつらがいる前じゃ話しないんだよ 」
「そんなこと気にしてる場合ですか。この前、お姉ちゃんのこと女の先輩達から守ってもらったって聞いて、その後お姉ちゃんももう高瀬さんのこと許してる感じでしたよ」
「え? マジで?」
許してるとは、俺が音楽室で相沢にしたことに対してだろう。
「はい。たしかに高瀬さんがしたことは許せないけど、そこまでお姉ちゃんのこと好きでいてくれるならって少し説得もしました」
「お前、すごいな」
「感心してないで頑張ってくださいよ。夏希さん、想像以上の王子様でしたね」
「だろ?」
「あれは手強いです」
「だから俺も焦ってんの」
野村が一生懸命三浦に話しかけている姿を見ながら、相沢妹との会話を続ける。
あんなに一緒にいたのに、野村が三浦のことが好きだったなんて全く気付かなかったななんてふと思う。
「他人の心配してる場合ですか」
「何が」
「今、ひかりちゃんたちの方見てたから」
「よく見てんね」
「人間観察、得意なんです」
「へぇ」
「とにかく、後でお姉ちゃんとあの人たちを離すので、お姉ちゃんと二人で話でもしてきてください」
「……なあ、何でお前はそんなに俺とアイツをくっつけたがる?」
ずっとそれはひっかかっていた。相沢のことをちゃんと好きになってくれる男と幸せになってもらいたい。
そうこの女は言ったが、もしも夏希が本気で相沢のことを好きなら、それはそれでいいということにはならないのだろうか。
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