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「私、本当にお姉ちゃんにはちゃんとお姉ちゃんのことを見てくれる人と幸せになってもらいたいんです」 「それはわかったけどさ」 「今まで出会ってきた人達って、皆私とお姉ちゃんを比較したがったんです」 「まあ……似てないからな」 「お姉ちゃんのこと利用して私に近付いてきたり、お姉ちゃんのこと馬鹿にして私を褒めようとするような人間ばかり」 「……」  相沢がいつか言っていた「妹さんは可愛いんだねって言われるの」という言葉が頭の中に木霊した。  たしかにあの時のアイツは悲しそうだったし、どこか諦めているようにも見えた。 「私にとってお姉ちゃんは、本当に大事な存在なんです。ずっと親代わりだったってこともあるけど、中学であることないこと噂立てられたり、クラスの女子に嫌がらせされたりした時も、私の代わりにお姉ちゃんが怒ってくれたりしたんです」 「え? 相沢が?」  この間の先輩達に絡まれて泣いていたような相沢からは想像もつかなかった。 「お姉ちゃん、自分のことになると自信がないのか全然だめなんですよ。卑屈になったり、弱気になったり。でも、私のことになると、別人みたいにむきになって守ってくれようとするんです」 「へぇ……」 「皆は、そんなお姉ちゃんのこと知らないから馬鹿にしたり見下したりするけど、私にとっては誰よりも信用できるし、尊敬だってしてます」 「そっか」 「はい。だから、高瀬さんがお姉ちゃんのデートの相手だって知って嬉しかったんです。私のことを知らない人がやっとお姉ちゃんを見てくれて、しかも家まで送ってくれて。ちゃんと女の子扱いしてくれる人がいるんだって」 「あー……まあ」 「それに、私のことお前呼ばわりするのなんて、高瀬さんくらいですよ」  全て事実なのだろうが、周りの男が皆妹狙いで、そのために相沢を利用しただとか、お姉ちゃんを女の子扱いしてくれるだとか、何となく自分は可愛いというのを自覚していて相沢に対して上から目線な発言が気になった。  結局はなんだかんだ言って、自分は可愛くて相沢はブスで、そんな可哀想なお姉ちゃんだと一番見下しているのはコイツなんじゃないかと思えた。
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