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「お前は、相沢からなんて聞いてんの?」
「音楽室から空を見てたら話しかけられたって」
「ふーん。じゃあ、そうなんじゃない? 俺も夏希からそう聞いてるし」
本当のところは俺にもわからない。相沢は、夏希の方から話かけてきたとしか言わなかったし、ただ眺めているだけで満足していたやつが、自分から夏希に話しかけることができるとも思えなかった。
だから多分、それが事実なのだと思う。なぜ夏希がそこで相沢に声をかけようと思ったのかは謎だったが。
「ふーん……でも、なんで優なんだろうね」
「さあな」
「夏希先輩の周りなんて綺麗な先輩うじゃうじゃいるのに」
「……夏希は外見で人間性を図ったりしないからな」
「……」
おそらく三浦は、夏希のほうから相沢に近付いたのが面白くないのだろう。しかし、三浦のこういったところが自分の価値を下げていることに気づけないのだから、愚かではあると感じる。
「でもまあ、夏希は誰にでも優しいから。俺と違って。だから夏希についていってもらえばいい」
「……私は、秋がいい」
「俺は嫌だよ」
「……わかった」
三浦は、一瞬顔を歪ませたが下唇を噛んで暫く黙った後、静かにそう言った。
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