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後は目覚ましをかけて、お風呂に入ってとスケジュールを考えていると、部屋のドアがノックされ、すぐに開かれた。
「お姉ちゃん、ハサミ持ってる?」
「ハサミ? あるけど」
妹の瑞希が部屋の中へと足を踏み入れると、私はまた机に向かい、ペン立ての中からハサミを取り出した。
それを手渡そうと振り返れば、瑞希は用意した服をじっと見つめていた。
「でかけるの?」
「明日ね」
「ふーん、ひかりちゃん?」
「ううん、クラスメイト」
「え? お姉ちゃん、ひかりちゃん以外に友達いるの?」
「いない」
「……じゃあ、誰と行くの?」
「嫌いな人」
「なにそれ」
瑞希はわけがわからないといったふうに顔をしかめた。
それもそうだろう。よっぽどの理由がない限り、普通は嫌いな人間と出掛けたりしない。私はそのよっぽどの理由をもつ人間なだけだ。
「ちょっとね。いろいろとあって」
さすがに理由を話す気にはなれなかった。瑞希は当然中学の時から男子にちやほやされている側の人間で、どちらかと言えば高瀬兄弟の人生に近い。
私の恋愛事情を知られたくはなかった。
「ふーん、二人で出かけるの?」
「そうだけど……」
「ねぇ、その人男?」
「うん、まぁ……」
「お姉ちゃん……ついに男子とデートするの!?」
「デートって……そんな華やかなもんじゃないわよ」
「何言ってんのよ! 男と二人で出かけるだなんてデート以外に何があるのよ! お姉ちゃん、こんな服着てくつもり?」
「服? 買い物に付き合うだけだよ?」
「あー、もう! これだからデートもしたことないやつはダメなのよ!」
瑞希は、興奮気味に声を荒げると、私のクローゼットを勝手に開け、中を物色し始めた。
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