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「ろくな服がない……」
瑞希は、散々私のクローゼット内を荒らしてから落胆したようにそう言った。
「だから別にいいって。服なんてなに着ても一緒だよ」
「一緒なわけないでしょ。普段何着てんのよ」
「制服」
「プライベートよ!」
「ここにあるものに決まってるじゃない」
「あー、もう! ちょっと待ってて」
瑞希はそう言い残し、私の部屋を出ていった。
私は散乱した服をかき集め、一枚ずつハンガーへかけ、もとあったように並べ始めた。
Tシャツ類は畳んで積み重ね、チェストの中へとしまっていく。ほとんど中身を出してしまったんじゃないかというほどの量だ。
そうこうしている内に、瑞希が服を抱えて戻ってきた。
私が持っていない鮮やかな色ばかりが瑞希の腕の中から顔を出している。
瑞希は私の傍にくると、一枚の服を手に取り、私の体にあてた。
顔をしかめながら首をかしげ、一枚、また一枚とあてていく。
「……どれも似合わない」
「悪かったわね。私にはそういう派手な色は似合わないのよ」
「派手じゃないわよ。華やかって言って。お姉ちゃん、いつも黒ばっかなんだもん」
「目立たなくていいじゃない」
「黒ずくめじゃ余計に目立つわ」
瑞希が服一つでこんなにむきになるのか私には理解できなかった。どうせいい服をきたって、私が服に着られてしまうに決まっている。素材が悪ければどんな服も映えるわけがないのだ。
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