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瑞希は諦めることなく小さく息をついては更に服を追加したり、組み合わせを変えたりしながら最終的に一組を選んだ。
「まあ、これかな。私にはちょっと地味だから一回きてもう着なかった服だけど、お姉ちゃんにはちょうどいいかも」
瑞希がそう言った服は、紺のワンピースだった。膝より少し下の裾に同じく紺のレースあしらってあり、襟元にはビジューがキラキラと輝いていた。
たしかに瑞希の服にしては落ち着いた雰囲気のワンピースだ。
「私、スカートなんて普段履かないのに……」
「たまには履きなよ。せっかくのデートなんだし」
「でも……」
「いいから! 靴も服に合うの玄関に置いておいてあげるから」
「え? スニーカーでいいよ。歩くし」
「そんなこと言ってるからお姉ちゃんは可愛くなれないんだよ」
「あのねぇ……」
子供の頃から可愛い可愛いと周りからちやほやされてきた瑞希には言われたくない。この顔に生まれてきていたら、服を選ぶのだってさぞ楽しいだろう。
整った顔をした人間程、こういうことを言うんだ。
「お姉ちゃんさ、もしかして可愛い子がなんの努力もしてないと思ってるんじゃないでしょうね」
「なによ……」
「私はどうせって卑屈になるのは勝手だけど、お姉ちゃんだって私の努力も知らないくせに生まれ持ったものだけのせいにしないでよね」
「あんたが何の努力をしてるっていうのよ」
「毎日腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットを100回ずつ」
「え!?」
「私、お姉ちゃんよりも太りやすいの。だから体型維持するのに毎日筋トレしてるのよ」
「そうなの?」
「ニキビだってできやすいから、毎日ちゃんとマッサージしてスキンケアに力入れるし、お姉ちゃんが諦めて放棄してる分、私は努力してるのよ」
「へぇ……」
もともと可愛い子って、なんの努力をしなくても可愛くいられるものなんだと思っていた。私は、瑞希の話を聞いて驚かずにはいられなかった。
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