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 実際に開店すると、衣装が恥ずかしいだのスカートが短いだのと言っている暇などなかった。  高瀬秋と野村くん目当てで他クラスや先輩、後輩はもちろんのこと、他校の女子生徒も噂を聞きつけ、廊下には長蛇の列ができた。  男女問わず人気者のひかりは、広告の看板を片手にぐるりと校内を1周しただけで彼女の後にこれまた数十人を引き連れて戻ってきたのだ。  文化祭のレベルの客じゃないじゃない……。  次から次へと押し寄せる客と、きゃあきゃあと黄色い声を上げる女の子達で狭い教室内はごった返していた。  ある程度座れるようにテーブル席を用意してあったが、それらはあっという間に埋まり、渋々飲み物だけ購入して廊下に追い出されてしまう人の方が増え、ブーイングも起こった。しかし、ひかりと野村くんが廊下で一緒に撮影を受けたりすることで、それもすぐにおさまっていった。  アイドルの握手会でもあるまいし、何でたかだか文化祭でこんな人混みになってしまうのだ。  私の当初のただ膳を運んでいればいいという安易な考えは、忙しさで飛び回る結果となった。  想像していたよりも遥かに客入りの多かったこのクラスは、飲み物も食べ物もものすごいスピードで売れていき、高瀬秋もが廊下に出たことで、回転率も上がり教室内は落ち着きを取り戻していった。 「疲れた……」  いちいち声をかけられては写真撮影に応じている人間に比べれば、私の役目などたいしたことはないのだけれど、それでも汚れたテーブルや床を拭いたり、膳を配ったりすれば、疲労は溜まっていく。  もう少しすれば一段落つけるかもと兆しが見えてきた頃、「優ちゃん」と声をかけられ振り返れば、とても綺麗な顔をした人が立っていた。
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