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いつも、自分の冷たい物言いに、周りは離れて行くのに、彼は秀のことを、友人と言ってのけたのだ。
驚いて、彼を見てしまう。
「え?友達とか、嫌だった?入学式の時、じっと見てたこと怒ってる?」
そんなわけはない。
確かに、入学式の時は、なんだ?と思いはしたが、別に見られることが嫌だったわけではないのだ。
単に、こんな少ししか話しをしていないのに、友達と認定されたことに驚いたのだ。
「否、そうじゃなくて……」
どう説明したら良いのかわからない。
今まで、会話は事務的なものしかしてこなかった。
同年代の友人……仲間でない、外の世界の友人を持ったことのない秀には、どうしたら良いのかわからなくなってしまった。
「あー、良かった。ぶしつけに見ちゃったから、嫌われてるかと思った。入学式の後、声かけようと思ったら、もういないからさぁ」
あの後、声をかけようとしてくれていたのか、と秀は思う。
実は入学式の人の多さに辟易して、気分も悪くなってしまっていたので、終わった瞬間席を立って、外へと出てしまっていた。
彼は、誤解したまま、自分のことを気にかけてくれていたのだろう。わざわざ、声をかけてきたことからもわかる。
「今まで、そんな奴いなかった……」
呟いた秀に、祐也は「え?」と声を上げる。
秀はそんな裕也に、なんでもないと首を振る。
丁度。学科の説明をする事務の人が教室へ入って来たことで、二人は一端会話をそこで終わらせた。
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