38人が本棚に入れています
本棚に追加
霊安寺に、預けられて……母や父よりも、住職を慕っていた。優しくて、厳しくて。でも、子供らしくいて良いんだと、悪戯なんかを教えてくれたのも住職だった。
兄のことは、尊敬している。
早くから、自分の力を見極めて、それこそ総帥にふさわしくあるために、厳しく育てられたはずなのに。
優しい眼差しは、かわらず俺を見てくれていた。
「でも、俺が大学へ行くのは……」
既に、すぐ上の兄はアメリカ留学をしている。
従兄も、大学生だ。
家が貧しい訳じゃない。どっちかというと、裕福である。
どこからこんなにお金が入ってくるか、よくはわからないんだけれど。
多分、俺が大学へ行っても、問題はないんだろう。だから、兄は提案しているのだ。
俺は、高校生活でも、友人を作らなかった。否、作れなかった。
自分の力を知られるのが、怖かったから。
そして、何よりも、人間が恐かった。
ここにいる、仲間は大丈夫だ。大事な仲間、友人だと思っている。
でも……人の、人間の体温が恐いだなんて、そんなこと言えやしない。
最初のコメントを投稿しよう!