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秀は、ぽっかり空いた時間の部分を、トントンとペンでつついていた。
「何?時間開いたの気になるの?」
たしかに、今までの学校生活で、こんな風にぽっかり空欄ができることなんてなかったから、祐也も自分の授業用紙の空欄に違和感がある。
「なんか、さ。違和感?」
同じことを考えていたらしい秀に、祐也は笑う。
「でも開いた時間あると、やらなきゃいけない課題とか、その時間に出来るじゃん。時間の使い方次第じゃない?」
あー、なるほど。秀は納得する。
やっぱり俺、祐也に教えられてばかりだな、と少し自嘲まじりの笑みが漏れる。
「時間の使い方次第、か」
ふっと笑った秀がなんだか儚く見えて、祐也はついつい手を伸ばして、秀の手に触れていた。
「え?なんだ、祐也?」
振りほどきはされなかったが、俺唐突に何してんだよ、と慌ててしまう祐也。
秀は秀で、裕也に触られてるのに、いつもみたいに振り払ったりとか、俺してない。と困惑だ。
「え、や、えーっと、だな。秀の手綺麗だなって」
なんだその良い訳はー!俺変人じゃないから。違うから。いや、たしかに秀のことは好きだから、男を好きになるとか変かもしんないけど!秀だけだから!変なことも確かに考えてるけど、それだけじゃないし!
あきらかに、自分でも戸惑ってます、という祐也に、秀は普通に笑いが込み上げた。
「なんだ、それ」
と。
秀の笑顔ゲットです!とか祐也は思いながら、こうやって仲良くなってくの、楽しいなと感じていた。
秀も同じように、楽しいと感じてくれていたら良いな、と思う祐也だった。
俺、普通にこうやって笑えたんだな、と秀は考えていたが。祐也といると、今まで自分でも気付かなかった自分、という発見があると秀は思った。
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