2人が本棚に入れています
本棚に追加
隣に座っている先輩が疎ましそうな目でこちらを見てきた。どうやら今日も残業のようだ。そんな目で見られても俺は今日の仕事を全部終わらせているのだ。残る必要はどこにもない。始業時間二分前に席に着き、終業時間ピッタリに席を立つ。夏なんかは空がまだ明るい時間に帰られるし、冬はさすがに外が暗くなっているけれどコンビニに寄ってあったかいコーヒーを買って帰る程度の楽しみはある。
そこそこの成績、目立たず奢らず、可もなく不可もなく。それが俺の生き方だった。
「そろそろアップデート終わるかな」
会社を出てポケットからスマホを取り出す。ラインだとかツイッターの通知は全部無視をして、四角いアイコンをタップする。歩きながら操作するのは怖いからとりあえずダウンロードだけしておいて、続きは電車の中かな。Wi-Fiをつないでいないからダウンロードも遅いだろうし。それにコンビニで買わないといけないものもある。
駅の近くにあるコンビニは小さいけれどそこそこ品揃えはいい。一番安いカップ麺と、発泡酒と、それからレジの前に置いてあるカードを一枚手に取った。このコンビニで買うと、結構いいのだ。今までの経験上。
「すいません、これ、五万円分で」
「えっ」
「えっ?」
「……あ、はい。五万円分ですね」
最初のコメントを投稿しよう!