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この動きを世間では、権力者側の大人たちが、か弱い女性候補を虐めている、というように捉えたのだ。
対抗するべき野党の候補も、頓珍漢な人物を公認に選んでしまい、全く相手に成らなかった。
これで世論の趨勢はほぼ決したと言っても過言ではなかった。
自和党都議として、党の為に粉骨砕身の働きをしようと、党公認候補を全力で応援活動していた、錦城政治の頑張りも空しく、蓋を開けてみれば池田綾香の圧勝で、東京都知事選挙は幕を閉じた。
錦城は応援していた党公認候補が大惨敗した事で、大いに落胆したものだが、しかしこの選挙戦を戦っている時に、奇妙な若者に遭遇した事が、選挙戦その物よりも心に引っ掛かるものがあった。
それはとある日、選挙戦合間の休憩がてら、事務所近くの喫茶店に入り、喉を潤していた時だった。
隣の席に座っている若者が、ノートパソコンで政治ニュースを読みながら、一人政治批評を呟いていたのだった。
政治の話題だったので、錦城も気になって神経を耳に集中させた。すると若者は、今回の都知事選挙での、自和党の不手際について非常に厳しい口調で批判していたのだった。
錦城は自和党の議員なので、やはり自和党の事を悪く言われるのは正直面白くない。
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