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パパは新聞を半分に折りたたんでテーブルの上に置くと、イスを引いて席を立った。支度をするためにリビングの隣のパパの書斎へと向かう。
「あら、もういいの?」
ママはパパの支度の手伝いをするために、後を追って書斎へと消えた。書斎からは、「ああ」とか、「いや」など、ママの質問に答えるパパの短い返答が漏れ聞こえてくる。
「まい、食べもので遊んじゃだめ。ママに叱られるよ」
気がつけば、まいは食べることを中断して、ボイルしたニンジンを細切れにするという遊びに熱中していた。
「ほら、ちゃんと残さず食べて」
あたしが細切れにされたニンジンをフォークですくってまいの口元へ運ぼうとすると、妹は顔を背け、
「やあーーっ」
と叫んだ。
細切れのニンジンをテーブルの上に投げるまいを見て、あたしはため息を吐いた。
「……まい」
もう知らないからと呟いて、あたしはキッチンから取ってきた台拭きでまいが散らかしたニンジンの残骸を片づけた。オレンジ色のカケラは、フローリングの床にまで飛んでいる。再びため息を吐きたくなる気持ちをぐっとこらえてカケラを指で拾い集めると、コップに残っていたミルクを飲み干し、「ごちそうさま」を言った。使った食器を流しに運び、リビングのソファに横になる。サイドテーブルの上にあったリモコンでテレビをつけた。
「……おねえちゃん」
あたしが怒っていることに気がついたのか、まいはぐずぐずと目を擦っている。あたしは上半身を起こして、ひとり分のスペースを空けてあげた。まいは親指をしゃぶりながら、あたしの隣でおとなしくアニメを見ている。まいはまだ小さい。だから怒っても仕方がないとわかっているのに、最近あたしはそんなまいを見ていると、無性にイライラしてしまう。
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