ゆうれい ※BLではありません

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 濡れたビーチサンダルが歩くたびに、ぐしゅぐしゅと変な音をたてる。 「おい、チビ。待てよ」  ひーくんが後ろから追いかけてきたけれど、あたしは気づかない振りをして、すたすた歩き続けた。 「チビ、こら、みひろ」  あたしは仕方なく立ち止まると、サッカークラブで日に焼けたひーくんの顔を睨みつけた。  容子ちゃんの話によると、去年のバレンタインには、数人の女の子がわざわざ家にまでチョコレートを届けにきて、キャーキャー騒いでいたという。その話をしたとき、容子ちゃんの小鼻はぴくぴくと膨らんでいた。容子ちゃんが「サイコーにカッコいい」と自慢するひーくんの顔は、いまは鼻の頭の皮が剥けていて、ひどく格好が悪い。  水着のフリルになったところに水滴がたまって、ぽたぽたとアスファルトにしたたり落ちた。 「なんでそう頑固かなあ……」  ひーくんは、ぶつぶつと独り言を言った。 「ほら、送ってやるよ」  そう言ってため息を吐くと、ひーくんはあたしの手を取った。反対側の手には、ビニールバッグに入った、濡れてないあたしの洋服。さっき容子ちゃんの家に、あたしが忘れてきたものだ。 「なあ、知ってるか。すぐその先にな、古い屋敷があるだろう。あそこ出るんだぜ」  あたしはひーくんの横顔を見上げて、じろりと睨んだ。 「どーせまた嘘だもん」 「嘘じゃないって。今度はほんと。正真正銘、真剣な話」  ひーくんが立ち止まった。あたしの顔を見て、にやりと笑う。 「わかった。お前、ほんとは怖いんだろう」 「……怖くないよ」  あたしはそっぽを向いた。 「じゃあ耳を貸してみろよ」
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