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そのあとのことは、あまり覚えてない。
深夜2時まで飲んで、閉店を告げられて外へ出た。
あまりの寒さに2人でタクシーに飛び乗り、神田まで移動してからホテルに入った。
ぐるぐる回る風景をぼんやり眺めながら、ずっと星崎の手を握り締めていた。
「彩さん」
「なあに?」
「好きになっていいの?」
「いいよ」
星崎の右肩に、ルカの手のひらサイズの星型のタトゥーが入っていた。
「これ、可愛いね」
「可愛いでしょ。俺、スターになるから」
「星崎だからスターなの?」
「そうそう。生まれながらスターなの」
「あはははは」
2人とも、飲みすぎたんだと思う。
ぼんやりとしか覚えてないその日のことを、思い出すだけで胸がきゅっと締め付けられて、彼のことを愛おしいと思う。
「俺、人妻と寝るの初めてだ」
「私も浮気したの初めて」
「お互い初体験だね」
「うん」
星崎との距離がどんどん縮まっていったと、その時は感じた。
私と星崎を繋ぐ何かができたような気がしていた。
それがどれだけ脆いものかは想像ができないほど、その時の私は幸福に包まれていた。
彼との繋がりが、なるべく堅固なものになるよう祈りながら、夜が明けるまで彼の手を握っていた。
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