第1章

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「あっ、血が・・・っ!!」 白く長い腕には赤く腫れ、擦り傷や切り傷がある。 「まさか、さっきの?」 悪寒に似た感覚に、心が青ざめていく。 「チガウと思います。さっきナイフには触れなかったから」 (どうしよう、怪我してるから病院行った方が。でも、病院行ったら警察に知らされちゃうし・・・) 助けてもらった恩を仇で返す気がしてしまう。 このときの判断は彼氏と別れて餓えていた、と言うのが頼りない免罪符である。 「じゃあ、ウチに来ませんか?」 * * * 「狭いですけど、どうぞ」 「オジャマします」 やっぱり、性急過ぎたかもしれない。赤茶色の洒落た外観の建物が見えて来た時に、今更ながら、そんな事を後悔していた。
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