プロローグ

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PM6:00―――。 四車線道路。ぎろりとしたヘッドライト行列。 分離帯を隔てて、通り過ぎてゆく反対車線に恨めしい目線を送っている様にも見える。 なかなか進まない右側車線最後尾に一台、そしてもう一台の車がついた。 一台目は黒、二台目は白の普通車である。 両車両とも、他の車の類に漏れず安全第一、双眸は光線を放っているが、白い車体だけは、どこか寛大さを有していた。 車内には、黒いサングラスに黒いスーツを着た男性が数名。 運転席から助手席、後部座席に座っている人物は、一様に個体識別が困難な恰好をしている。 ただ、ひとりを除いては―――。 黒いスーツ姿の男性ふたりに挟まれ、後部座席中央に座る青年。 古着屋で手に入れたと思しき、縁が擦れたキャップの下に曲のある金髪をゆるく一本に縛っている。茶色いサングラス、着古した白いTシャツに、ジーンズ。履き古したスニーカー。どう見ても、ひとりだけ浮いている服装だ。 遊びを繰り返していたブレーキペダルだが、とうとうゆっくりと深く踏み込まれてしまった。 大名行列の行進が立ち往生する間にも、反対車線は流れていく。 黒スーツの男たちは腕時計を見たり、僅かに首を傾げ窓越しに周りを見ている。前の黒い車の搭乗者も同様だった。 帰路を急ぐ群れにとって、イライラが頂点に達する状況に間違いないが、青年はそれすらも愉しんでいるようだ。 運転手は前の車を見やりつつ、サングラスの向こうから鋭い目つきでルームミラーの中に映る景色を確認していた。 後部座席の間、リアゲートガラスに黒い影が姿を映す。 瞬間、運転手は右にハンドルを切る―――。
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